歯 vol.3
歯 vol.3
生まれて初めて見た父親の口の中。
汚いことには違いないのですが
「酷い」という言葉が一番近いような状態でした。
歯槽膿漏で歯茎は紫色。
歯の根元を少し触っただけでも血が滲んできます。
折れた歯の根元はそのままですからどす黒く
残った上の歯にはたくさんの食べかすが付いています。
奥歯は上下左右とも全くありません。
下の前歯も1本しかありません。
歯根だけが残った状態になっているのが
上下合わせて6~7本だったように覚えています。
上の歯は残っているとはいえ、前歯4本は差し歯です。
差し歯の右側の1本と左側の1本がどうやら自分の歯。
その時点で
父のオリジナルの歯は3本しか残っていなかったのです。
当然、以前に作った入れ歯は痛くて入れられません。
入れられないどころか、もう使えないと言われたのです。
「う~ん、これはどうしようかな…。」
ベテラン歯科医に頭を抱えさせた歯の状態を見て
私も愕然としました。
毎日磨いていなかったっけ?
引っ越し前も、何回かは歯科医に行ってたよね?
そこで初めてちゃんと磨けていなかったことに気付いたのでした。
時すでに遅しか?
それでも、人は食べることが基本なのですから
時間はかかっても、食べられるようにしましょうと
歯科医が言ってくれたのことに感謝を覚えました。